NY・ブロードウェイを舞台に、ミュージカルにかける人々の悲喜こもごもを描くドラマ「SMASH」。人物相関のおもしろさもさることながら、ミュージカルができるまでのプロセスをあけすけに描いているところがこのドラマ最大の魅力だろう。そして、そのリアリティの追求のためには、NYでのロケが不可欠となる。そのため、このドラマは全編NYでの撮影を敢行。近年、アメリカのテレビドラマは、アメリカ都市部でのスタジオ及びロケによる撮影の費用高騰と製作費の節減のために、都市部が舞台だったとしても比較的安くおさえられるカナダや、アメリカ中西部のスタジオを使う傾向にある。だが、「SMASH」はさすがスピルバーグがずっと温めた企画だけに、リスクをかえりみずNYでの撮影に踏み切り、結果“リアルなブロードウェイ”を描き出すことに成功しているのだ。
おかげでアメリカではもちろんのこと、カナダ、欧州、そしてアジア各国でも「SMASH」は人気を博している。誰もが思い描く華やかなブロードウェイの裏側は、国を超えて興味を集めるところだろう。その国際的な反響を受けて、今年2月「SMASH」シーズン2の撮影が行われているNYで、米国外のメディア向け取材が行われた。
最初に訪れたのは、マンハッタン中心部から車で30分ほど行ったところにある、ロングアイランド。ここには倉庫街のように見えるスタジオセットが組まれていた。この日、撮影で使っていないセットから順に見せてもらえるということで、まずはじめに案内されたのはアイリーンのオフィスのセットだ。劇中で出てくるアイリーンのオフィスは、窓からはマンハッタンの摩天楼が見え、さまざまなミュージカルのポスターが飾られた部屋として映し出される。だが、ここはセットということで、摩天楼は絵!?(実際には少々のVFX処理がなされている)でも、ポスターは本物ばかり。「ロミオとジュリエット」や「太平洋序曲」など、日本でもおなじみの演目のポスターが飾られているのは圧巻だ。
特徴的なのは、このスタジオの広さだ。ありえないほど狭いのだ。じつはアイリーンのオフィスのセットを出ると、となりにあるのはトムのアパートメントのセットだったりする。この狭さは、NYでの撮影らしさそのもの。NYはマンハッタンを離れても過分な土地がないため、このようにコンパクトなセットになってしまうのだ。
アイリーンのお隣さんにトムの家……。なんか変な気分だが、そちらに行ってみると、これまたディテールのこだわりに驚かされる。キッチンは実際に使えるようにしつらえられ、また仕事部屋にはさりげなく、ゲイのトムらしく「HIV人権団体からの表彰状」などが飾られていたりする。本編で確認できるチャンスがあるかどうかわからないが、室内のシーンも細かなところまで目を配らせると新たな発見があるはずだ。